レンブラントと国家分裂

amadeyus2008-08-05

週末の間、ここハーグ市はずっと曇りがちだった。石とレンガの町にふる雨は、余計に陰気な感じを醸し出すもので、数年前にイギリスに留学していた時の感覚を少し思い出した。一人で異国にいるのもあるのか、こういう時は言いようもなく、人恋しくなるのは、事実。


寮から歩いて10分くらいのところにあるマウリッツホイス(Maurizhuis)美術館に行ってきた。来るまで全然知らなかったけれど、ここはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、「デルフトの眺望」やレンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義 」、「ホメロス」、最晩年の「自画像」といったオランダ絵画の至宝が、元ブラジル提督マウリッツの邸宅内に、さながら当時のまま展示されており、小さいながらも第一級の美術館だった。


実はレンブラントは特に好きな画家の一人。その緻密な筆使いと微細な配色で、写真以上に写実的な絵画を描きつつも、とらえられた一瞬一瞬はそれぞれこちらに何か語りかけるようであり、その意味では同時に、非常に絵的な作品を描く。今回も、彼の筆が描く、眼球の輝きや生の皮膚の感触、そして甲冑の黒金属の質感などにそれぞれ口をあけて見とれていた。肖像画が特に好きなのだけど、これらについては、特にこちらを捉えるものがある。陰影の使い方が上手なのか、それともこちらを振り返るような構図が良いのか、展示室に入ったら、即時に目を捉えられてしまうのが(僕にとっての)レンブラントの絵である。


老年のレンブラントを描いた自画像は、顔の半分が微妙に影に隠れているのだが、近づけばその表情も明らかになり、寂しそうに、しかし、見ようによってはまっすぐとこちらを見つめている。他のレンブラントの絵に囲まれながら、備え付けのソファで、これをずっと見ていた。


さて、アカデミーでの授業は、一コマのGeneral Course以外は毎週教授が変わる。今週の新たなテーマは「国際機関と地域機関(ジュネーブ大学教授)」と「国際法の中の個人(ウィーン大学教授)」。今日はこれらに加えてディプロマ・セミナーがあり、今回のテーマは「国家分裂」。コソボケーススタディに議論をした。議論は大幅に延長され3時間半に及び、何度か発言・質問をしたものの、前回に続き不完全燃焼。国際法の知識もそうだが勢いを欠いた。前回は、自分の考えを論理的にまとめて発表する力が必要だと感じたが、今日は、いろいろ考えて自分をセーブしてしまい、ただただ勢いを欠いたようだった。